個人事業主になるということは、これからビジネスを開始するための最も簡単な方法であるといえます。
この記事では、個人事業主と法人経営者のどちらも経験した筆者（株式会社WEBCOS：代表）が、個人事業主とは何か、そのメリットやデメリット、個人事業主になるにはどうすればよいかについて説明します。
個人事業主とは？
個人事業主とは、個人で事業を営む人のことをいいます。
厳密には税務署に「開業届」を提出することで正式に認識されます。この際に個人名ではなく、「屋号」としてビジネス上の名称を決めていたりします。
一般的に個人事業主は「株式会社、合同会社」などの法人格形態を持たずに自分自身でビジネスを始め、ビジネス活動に必要なあらゆるすべての作業を自分で行います。
このあたりはこの記事にたどり着く方でもすでにイメージしていたとおりの内容かと思います。
個人事業主として開業するメリット・デメリット
早速、個人事業主として開業するメリット・デメリットを考えてみましょう。
会社員生活をしていると「個人事業主」って、ちょっとかっこいい響きがありますよね。
結論から言うと、響きと実際の損得は別物です。今後のビジネスに大きく関わる部分なので、はやる気持ちを抑え、冷静に比較してみましょう。
メリット
- 開業届自体は無料で費用がかからない
- 開業届けの提出は当日で完了する
- ビジネスの唯一の所有者――複数の株主を持つ必要がない
- 勤務時間、意思決定から何まで、ビジネスのあらゆる側面を完全に管理できる
- 努力に応じた収入が手に入る
- 青色申告ができるなど、税制優遇が受けられる
- 補助金などが受けられる
デメリット
- 法人のような登記がないため社会的信用が低い（業種による）
- 法人に比べて資金調達（融資）が受けにくい
- 採用募集活動において法人に比べて不利になりやすい
- 利益が多い場合に税負担が大きい
- 国民年金になるので将来の年金受取額が少ない
個人事業主になるために必要なこと
個人事業主になるには知識とスキルの組み合わせが重要です。
そして、ビジネスの立ち上げから運営の側面、金銭管理、マーケティング、顧客管理を理解する必要があります。
また、時間管理、問題解決能力、コミュニケーション能力など、業務を管理するために必要なスキルももちろん必要です。
自分を効果的に売り込む方法を知ることも個人事業主として成功するために重要でしょう。
個人事業主になる際に考慮したいリスクと自己評価
過去の自分を振り返っても、個人事業主になること・個人事業主であることは、開業した多くの起業家にとって魅力的な選択肢であると想像できるのですが、思い切って自分自身で個人事業主という形態を選択する前に、リスクと見返りを再考することが重要であるということを率直にお伝えします。
「個人事業主になる」――まず、この決定を下す前に、あなた自身がこれから手がけようとする事業における、スキル・リソース・計画の自己評価が不可欠です。
法人形態も経験した立場から、これははっきりと言い切れます。あなたが独立した際に第三者から見られるのは、あなたの専門性や能力であり、取引をするに値するのかどうかをジャッジされるからです。
法人からみても個人事業主という形態は、正直信用がありません。社会的信用が低いという普遍的でビハインドな状態からビジネスを興す、というのであれば、あなた自身に弱点をも覆すほどのスキル・能力がなければ土俵にも上がれないのです。
何を隠そう、これは私自身が個人事業主時代に身をもって経験しています。そして総合的に見ても、今では法人を選択して正解だったとも思っています。
また、業種によっては個人事業主であるかどうかはビジネススタート時にはあまり関係ないと思えるものもありますが*1、いずれにしても物事を始める前に自分が相手にする市場はどこの誰か？をロジカルに考えて評価することで、リスクを回避できるといえるでしょう。
（１：例えば美容室では店舗名を掲示することが主流であるため、顧客にとっってオーナーが個人事業主であるか法人であるかはサービス利用次の意思決定に影響することは殆どないと言える）
まとめ：個人事業主を選択するかどうか総合的に判断する
個人事業主になるためには原則として開業届を提出するだけで良く、法人に比べて設立費用や登記までに必要な時間やコストがかからないことは大きな違いです。
しかし、「楽」である反面、ビジネスフィールドで勝負ができるのかどうかを、ときには法人企業をも競合として比較し自己評価をすることが大切です。
自分には必要な能力が備わっていない、ということであれば独立開業そのものを見直すのも、人生という大切な時間を無駄にしないためには賢明な判断となることもあるでしょう。
また、総合的に判断した結果、法人格でビジネスをスタートすることのほうがビジネスに良い影響を与えられるという結論に至ることもあるかも知れません。
焦ったり、起業熱に駆られるのではなく、取り返しがつく段階でぜひしっかりと見極めるようにしたいものですね。
